第三章

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「じゃあお邪魔者は消えようかしらぁ。ゆっくりしていってねぇー。」 ふふふと笑い、お母さんは部屋を出て行った。 九里は閉められるドアを見てふぅ…とため息をつく。 「強烈だな」 「でしょ?」 お母さんまで妖怪を見る事が出来るなんて… 何なの我が家… 「お前…父親はいないのか?」 「そう。うちは母子家庭なの。お父さんについては良く知らないけど私が産まれる前に死んじゃったって聞いてる。」 「そうなのか…」 お父さんがいなくても別に寂しくはなかった。 お母さんがいたから。 お母さんも他の人と結婚しようとはしなかった。 「お母さんはパパが大好きだから」 いつもそう言ってた。 お父さんは幸せ者だなってずっと思ってきた。 「親子なのに似てねぇな。母親はあんなに美人なのによ。」 「ブサイクで悪かったわね。」 お母さんが美人な事くらい分かってる。 いくらお父さんが全く見ず知らずの人でもこんな時だけはその血を恨むわ。 「鬼みたいな顔すんなよ」 「誰が鬼よ!」 しかし今はそんな事言っている場合じゃない。 お母さんに九里が認識出来てる今、九里の置き場所に困る。 ずっと私の部屋に置く訳にもいかない。 絶対無理!! 「物みてぇな言い方するな」 「とにかく、どうするのよ!」 お母さんが九里を認識出来なければ、空き部屋にでも放り込んで置こうと思ってたのに… 「いつまたあの陰陽師が来るか分からねぇし…外は危険だ。 悠助のためにも室内にしろよ。」 確かに悠助は外に置いとく訳には… 「分かった。 九里、押し入れにいる事を許可するわ。」 「は?!」 まるでネコ型ロボットみたいだがこの際仕方が無い。 押し入れならお母さんにもバレないかもしれないし昼間は私も学校があるから外に出ればいい。 うん、完璧。 「但し着替えの最中とか絶対に覗かない事。」 「好んで見るものでもねぇよ。 それより押し入れに九尾狐を詰め込むたぁいい度胸だな人間のくせに。」 凄く不機嫌そうな九里だが他に方法が思いつかない。 九里もそれは同じなようでそれ以上は何も言わなかった。 こうして私と妖怪の奇妙な共同生活が始まったのだった。
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