第一章

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「可愛いね!」 「わー!かわい………」 びっくりした。 見間違いかと思った。 そりゃそうだ。 だっておかしい。 確かに可愛い。キツネは可愛い。 でも…どう考えてもキツネじゃないのが混ざってる。 キツネが隅っこに集まって寄り添ってる姿は、とても可愛いと思う。 でもその反対側にさ… なんか和服着た男の子が…座ってるように見えるんだけど… 「何見てんだ」 ほらなんかしゃぁべったぁあああ!!? 「どうしたのはるな気分悪いの?変な顔して…」 「え…愛衣は…見えない?」 「何が?」 「人が…柵の中に…」 「え?飼育員さん?」 「ううん違う和服の…男の子…」 「はるな…大丈夫?」 愛衣が私の顔を覗き込む。 「だ…大丈夫!気にしないで!」 疲れてるんだ私きっとそうだ…。 だってさ、キツネの柵の中に人間が展示されてるはずないもの。 「人間…お前…俺が見えるだろ」 またしゃべったぁあああ!? て言うか何時の間にか柵ギリギリの場所に移動して来てるし…!! 「みみみ、見えて無い!!何も聞こえない!!」 「返事してんじゃねーか」 「どうしたのはるな…本当に大丈夫?」 どうやら愛衣にはこの男の子の姿も声も届いてはいないらしい。 他のお客さんも騒いでないところを見ると… え…? まさか本当に私だけ…? 「おい」 「!!?」 いつの間にかそれは柵を越えて文字通り私の目の前に…?! 整った顔を強張らせてその人は私に言う。 「この赤子を育てろ」image=438220389.jpg
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