武士の誇り

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一方、とある集落では―― 「皆、無事か」 「あぁ、たいしたことはなさそうだ」 「今日は失敗だったな、相手が悪かった」 そんな会話を交わしながら、ぼろぼろになった男達が山中の集落へ帰って来るのを見ると、畑仕事をしていた女やそれを手伝っていた子供達が駆け寄って来る。 「また怪我をなさって…。無理をしないでください」 「父ちゃん、おかえり!」 「腹減ったよ、今日は何を買って来てくれたの?」 子供達のこの言葉に、男達はしばらく何も応えることができなかった。 「ごめんな、今日は、だめだった」 かろうじて一人が言うと、男達は俯いたまま、重たい足どりで各々の家へと歩きだす。 「とにかく、手当を」 妻の言う言葉も耳に入らず、不安げな子供達をちらり見遣ると、戸を閉めてしまう。
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