武士の誇り

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命拾いをした。 武士に対しあんな山賊まがいのことをして、斬られなかったのは奇跡に等しいのではないかと思う。 (こんなことはもう、やめてしまおうか) 父から引き継いだこの具足を見る度、何度も考えたことだった。 かつて大坂の陣で討ち死にした父は、今の自分を見たらどう思うだろうか。 具足に付いた泥が、父の、武士の誇りを汚しているようで心苦しかった。 守るべき家族と、護るべき誇り。 いくら己に問い続けようとも、どちらが重要かなど解るはずもなかった。
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