武士の誇り

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―――――― 「お、おい!皆、来てくれっ」 いつの間にか眠ってしまっていたようだが、何やら外が騒がしいのに気が付いた。 外に出てみると、先程の仲間の一人が慌てた様子で周りに話している。 「何かあったのか」 「さ、さっきの三人が…」 「それがどうした」 「か、金を落としていってた…。俺は撒菱を取りに戻ったんだ。そしたら、落ちてた」 すると彼は一本の紐でくくられた銭を、音をたてて見せた。 その音に、彼を囲んでいた村人達から歓喜の声があがる。 「やったな!」 「これで米が買える!」 「今日はついているな!」 疲れのみえる村人達の表情に、一時の笑顔がみえた。 (ついてる……?いや、違う、わざと落としたんだ) 「正、雪……」 確か、そう呼ばれていた。 あの男は自分達が牢人であることに気付いていたのではないか。 ふと呟いてみると、隣にいた老翁はそれを聞き逃さなかった。 「今、正雪と言うたか!」
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