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「爺さん、知ってるのかい?」
「由井正雪といやぁ、楠木正辰の一番弟子じゃねぇか」
「由井正雪…」
名前だけは聞いたことがあった。
幕府の仕官の誘いを断り続けている、風変わりな軍学者がいると。
「今、各地の牢人がその男のもとに集まろうする動きがある。だからといって、幕府も諸大名と関わりのある男に下手なことはできん」
「集まるって……討幕でもするっていうのか」
「さぁな」
(天下の徳川に喧嘩でも売るつもりか、馬鹿馬鹿しい。)
勝てるわけがない。普通に考えればわかることだ。
馬鹿げているとは思いながらも、どこか正雪という男のことを一蹴できずにいる自分を否定できなかった。
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