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それから二刻ばかり馬を走らせると、ようやく小さな茅葺きの屋根が見えてきた。
近くを流れる小川のほとりに馬を繋ぐと、三人は足早にその家へと向かう。
「菊、いるか。開けてくれ」
正雪が戸を軽く叩いて呼びかけると、中からは小柄で面立ちの端麗な女が現れた。
「これは正雪様!忠弥様に、半兵衛様も!遠路はるばるいらしてくださったこと、有り難う存じます」
お菊が上品な仕草で三人を中へ促すと、正雪は尋ねる。
「して、師匠の容態は」
するとこの質問に、お菊は気まずそうに言葉をにごらせた。
「そ、それが……父上は、その…」
これを聞いて正雪は、半ば駆けるように正辰の寝室へと急いだ。
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