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目の前では、床に伏せているはずの男が上半身裸で竹刀を鋭く振っているところだった。
「やぁ、正雪。久しぶりだね」
「……師匠」
額の汗を拭いながら嬉しそうに話しかける正辰に対し、正雪は心底呆れるような表情を見せている。
「えっ、ど、どういうことですか?」
「なんだよ、ぴんぴんしてんじゃねえか」
「……菊」
「えーっと…、どういう事でしょうねぇ」
お菊がうふふ、とごまかしてみせると、正辰は悪びれる様子もなく話し始める。
「久しぶりに顔が見たくなってね。こうでもしないと、君は来てくれないだろう?」
この言葉に、正雪は眉間に皺を寄せる。
「帰らせてもらいます」
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