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「……忠弥とは長い付き合いになります。短気で軽率ではありますが、志高く、己の信念を貫ける男です」 「うん」 「半兵衛は由緒正しき家を離れてまで、自ら塾の世話を任されております。心優しく、とても聡い男です」 「そうか」 「大名家の子弟や旗本から地方の牢人まで、塾の者も皆、自分の家族のようなものです」 そこで正雪は口を閉じた。 庭先から風のそよぐ音と、えい、やぁ、と槍を振る忠弥の声が聞こえるのみである。 「彼らを危険な目に遭わせたくはない……そういうことか」 正雪は黙っていたが、それは肯定を意味していた。
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