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「早速発たれますか」
「うむ」
「支度して参ります」
「その必要はない」
「えっ」
「おぬしはついて来るな、一人で行く」
「そ、そんな!危険です!」
泰平の世とはいえ、武がものを言う戦国の気風は未だ色濃く根付いている。
広く顔の知れる正雪の命を狙う者がいないとは限らないのだ。
「決めたことじゃ」
厳しく言い放つ正雪に、半兵衛は気圧されてしまう。
「……承知しました」
反発の言葉をぐっとこらえ、彼は了解した。
正雪の身を案じての反対であったが、常日頃付き従う自分さえも供に付けてもらえないことが悔しくてならなかった。
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