天才軍学者

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天下の徳川を堂々と皮肉る正雪に、忠弥は豪快に笑う。 「はっはっは!将軍家だけじゃねぇ、今や各地の大名がお前の兵法を欲しているぞ」 「わしは仕官するために兵法を身につけたのではない。それに、門弟達を捨て置くわけにもゆかぬ」 正雪の開いた「張孔堂」は大名の子弟や旗本も含め、およそ3000もの門人を抱えている。 忠弥もその一人として、足しげくここを訪れていた。 「戦の世はとうに終わっておる。わしの軍学はあくまでも学門じゃ」 「どうだかな」 「どういう意味だ」 「お前、腹の底じゃあ自分が戦の世に生まれていれば、と思っているだろう」 「何を言うておる」 意味ありげな笑みをうかべると、忠弥はどかっと床に腰を下ろした。 「お前の軍略と俺の槍、そして同志達の兵力があれば‥‥」 彼の物言いに、正雪の脳裏にはある言葉がよぎる。 討幕――‥ 「待ったところで幕府は牢人救済にのりだそうとはしなかった。‥‥この先もそうだろうよ、正雪」
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