報せ

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一方、その頃。 忠弥は槍の稽古をするべく、江戸の道場へと帰っていた。 全ての戸が閉めきられ、広々とした部屋の中央に、彼はいた。 (大坂の陣より約三十年) しんと静まりかえった部屋には、槍が空を切る音のみが響き渡っている。 (今の世は、何も変わっちゃいない) 目を閉じ、意識を一本の槍へと集中させる。 そうすると、外で吹き荒れる風の音、屋根の軋む音、己の鼓動さえもがはっきりと聞こえてくる。
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