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「まぁ、よいじゃろう」
信綱は白髪混じりの頭をさすりながら、わざとらしくため息をつく。
「今日おぬしを呼びたてたのには、理由があってのう。少々、聞きたいことがある」
正雪は少し頭を伏せたまま、黙って次の発言を待っている。
「最近、地方の牢人達がとある塾に集まりつつあるようじゃ。もっとも、上様はそのような小さきこと、気にもとめていらっしゃらないようだが」
信綱は注意深く正雪の様子を伺うが、正雪は顔色一つ変える気配がない。
「だが、大目付である中根正盛殿はこれを快く思うておらんでな」
「左様でございますか」
「おぬし、何か知らんか」
「何も、存じ上げませぬ」
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