12人が本棚に入れています
本棚に追加
「所用があるのでな。今日のところは、下がってよい。登城ご苦労であった」
「はっ」
もう終いか、と正雪は呆気にとられていた。
信綱が供の者を数人従え客間をあとにしようとしたその時
「ふん、戦の世の死にそびれなど今の世には無価値」
そう小さく呟いたのを正雪は聞き逃さなかった。
「待たれよ!」
先程までの彼からは想像もつかない程凄みのある声に、信綱は思わず足を止める。
「…何かな」
場の空気が張り詰める。
それまで頭を伏せていた正雪は、立ち上がって信綱と向かい合った。
最初のコメントを投稿しよう!