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時に軽率で危なっかしくはあるが、彼の猛々しい信念には正雪も少なからず共感していた。
だが、まだ時ではない。
今動いたところで、幕府に取り入ろうと躍起になった諸大名に潰されるのは明白であった。
「頼む、今の俺達にはあんたしかいない!」
多くの大名と関わりを持つ正雪が、幕府からの仕官の誘いを拒否し続けているという事実は、彼の意図に関わらず国中の牢人達を鼓舞していた。
忠弥は今こそ反旗を翻すべきだというのである。
しかし、今の正雪に応えるべき言葉は見つからなかった。
「……少し風にあたって来る」
そう言って正雪は部屋をあとにし、いつもの縁側へと向かった。
忠弥はその後ろ姿を、ただ見つめることしかできない。
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