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この会話を聞かなければ良かった、と私は一生後悔し続けることになる。
とりあえず窓を開けるとまだ少し冷たい春の風が入ってきた。
3月上旬の土曜日。
高校受験を控えた私は、自分の部屋を写真に撮っていた。
最後の最後まで撮るか迷ったこの部屋。
入るのさえ勇気がいった。
写真を撮ってからもしばらく動けずにいると、とんとんっと階段を上がってくる音がした。
「ミク」
「おじいちゃん…」
ドアを少し開き、こちらを優しい目で見ている。
「もう行きましょう」
「…うん」
おじいちゃん、本当にごめんなさい。いくら謝ってもあやまりきれません。その優しい笑みも、今の私には辛いだけなんです…。
私は、最後に一度だけ部屋を振り返った。
次に前を向いた時、私は自分の罪を背負って生きていくことを自分に誓った。私には、嘆く権利もないのだ、と。
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