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その後、私とおじいちゃんはすぐに家を出た。
鍵を閉める時、もう二度と戻ってこないのかと思うと戻りたくもないはずなのに、寂しい気持ちになった。
「…ねぇ、おじいちゃん」
私は、鍵を握り締めたまま言った。
「…この家に、また新しい誰かが住むのかな?」
「………」
おじいちゃんが黙って聴いてくれているので、私は続ける。
「例えば、私みたいな女の子とお母さんとお父さんが仲良くご飯をたべたりするの?…私とお母さんとお父さんがそうしていたように?」
おじいちゃんが何か言おうとして言葉を飲み込むのがわかる。おじいちゃんは私が泣きそうになるといつもこうなる。
「私達が幸せを無くした場所で誰かが幸せに暮らすの?何も知らずに…」
やっと言葉を切って鍵をカバンにしまった私に、おじいちゃんは、また優しく微笑んだ。
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