始まりの兆し

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********** カリカリとペンを滑らす音が部屋に響く。 (まったく…、冗談じゃあないぞっ!) 何が「冗談じゃあない」のかと言えば、いろいろである。 ギルドの仕事を自分のようないたいけな少年にさせる大人も、 押し付けた上に無理難題を言い渡し、挙げ句のはてには依頼主に渡す報告書を子どもに書かせる大人も、 それを脅してまでさせる大人もだ。 (しかも親父に会いに行け、だぁ?) そんなもの、言語道断である。 彼――リューの「親父」とは、先ほどギルドマスターが口にした『ダリ』である。 ダリ・スホーク。 リューの父親にして、スホーク家の当主である。 スホーク家と言えば、ここ、ラドニア国の中でも絶大な権力を持つ「六光貴(リクコウキ)」のひとつである。
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