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- 第一日目 ~本土にて~ -
別に朝寝坊したわけでもなく
用意に時間がかかったわけでもないが
少年は 幼馴染の 聡を待たせていた。
ギリギリまで出掛けたくなかったのが理由なので
少年は 少しバツが悪かった
『聡!ゴメン!待たせたな』
「なにしとん クルト 早よせんと
バスに置いてかれてまうで」
『…ちょっと 朝のお通じのほうがさ
なかなか しぶとくてね』
「ははっ!なんやそれ」
そんな他愛のないやりとりをしながら
バスが待っている場所まで向かっていると
普段なら着ないであろう服を
お召しになった女子の集団が見えてきた
その集団の中に美咲も居たが
少年と美咲は同じクラスではないし
特に親しいわけでもないので
美咲もこちらを一瞥することもなかった
「なんやあいつらケッタイな格好しとんな」
聡は 少年の気持ちを代弁したかのように呟いた
年頃の女の子の心情なんて
知る由もなかったわけだが
これからパーティ会場にでも行かんばかりの いでたちだなと思い 苦笑した
「なーなークルトさんよー」
聡はおどけた調子で話かけてきた
だが すぐに真顔になり
少年が危惧していたことを語り始めた
「真面目なハナシ 肝試しキツない?
場所が場所なだけにさ
…オバケ怖いわけちゃうけど
ホンマになにごともなく終わるんかいな…」
悪い予感はしていたが
彼の予想が的中することになるなんて
少年は全く想像だにしていなかった
そして
友達と おしゃべりしながら
屈託のない笑顔でいる美咲もまた
自分の身にも降りかかるなんて
夢にも思っていなかったであろう
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