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- 第一日目 ~島へ~ -
島へ向かう船の中で
少年は疲労困憊していた
本土での移動があわただしく
やたら歩かされたので
足が棒のようになっていたし
洗脳のフルコースを堪能したおかけで
精神的にも疲弊しきっていた
島に到着すると
なるほど 話に聞いていた通り
ウサギの姿が ちらほらと見えた
中には こちらに寄ってくるウサギもいた
おそらく 人に馴れているのだろう
まるで 出迎えてくれているかのようだ
「うほー!ウサギや!ウサギ!!」
聡は吠えた
今にも取って食わんばかりの勢いだ
『おいおい 追っかけたりすんなや?』
「なんや クルト ウサギ嫌いなん?」
『そういうワケちゃうけど
野生なんやし そっとしといたほうが…』
「そこのウサちゃん かーわうぃーねー!
あっ!逃げた!! おーい待ってよ!」
……聞いちゃいねえ
しかし少年は そのバイタリティ溢れる
聡の行動力は嫌いじゃなかった
船で少年たちがバタンキュー(死語)だったときに
唯一 彼一人「海メッチャキレイやで!」と大騒ぎをしていたし
いつも無駄に元気な彼を 悩みがなさそうだなと
少年はうらやましく感じていた
と もの思いに耽っていると
「よくなついてんな ウサギ飼ってるん?」
『ほへ!?』
真後ろから突然話しかけられたため
少年は間抜けた返事をしてしまった
振り返ると水色のワンピースを着た少女が居た
少年とクラスは違うが
名前は「美咲」だということは知っていた
美咲は少年の足元を見ていた
そのとき初めて少年の足元に
ウサギがいることに気がついた
「ウチもな ウサギ飼ってんねんけどな
こんな なついてくれへんで」
『へぇ そうなん? ていうかおれ
犬は飼うてるけどウサギは飼うてへんで』
「ホンマに?思いっきり捕食関係やん!」
『プッ 確かにそやな』
そうして美咲と他愛のない世間話をしていると
「そや クルちんてさ あたしと
肝試し同じ班やんな? よろしくね!」
いつの間にか 変なあだ名で
呼ばれてしまっていた
美咲も少年の名前を知っていたようだ
また 少年は美咲と同じ班だと
言われるまで気がつかなかった
聡と同じ班なのは 聞いていたが
少年の足元に近づいてきたウサギに
無邪気に手を伸ばす少女
細い腕に小さな手だった
少年は 別に 少女の手を
まじまじと確認してたわけじゃない
ただ 間違いなく この時と あの後は
いや あの瞬間だけ除けば
……美咲の腕 あるよな?
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