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【太平洋 パルミラ環礁沖 飛行禁止空域近隣】
平和を体現したような穏やかで温暖な気候、一面に空と海の透き通る青が広がる。
しかしその実、そこはテロに対し軌道エレベータを防衛するために設けられた飛行禁止空域に程近い。
そんな物騒な空を物騒な4機編隊の戦闘機F-22Aが爆音を轟かせながら低高度で飛行していく。
「かったるいバカンスだ、なぁ、ヒッポ?」
機体のコックピットで無精髭を生やした白人の男が言う。
『キャプテン、いい加減そのTACネームやめてもらえません?』
そして無線器越しに若い男の声がパイロットスーツを通して直接耳に響く。
その声の主は隊長機であるこの機体の左右に並ぶ機体の中で右端の機体、つまり4番機に乗っている。
「うるせぇな。お前が大口開いて寝てたからだ」
『2年も前の話じゃないですか』
「2年経っても半人前なんだよ、お前は。隊の中でシミュレーターの最下位だろうが」
『……はい』
それっきり4番機から反論の声は途絶え、無線からは他2機のパイロットの笑い声が聞こえてくる。
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