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母の日
僕とお父さんは早起きして家中をピカピカにした。
お母さんが居なくなって家が汚くなったって思われたくなかったから。
だから二人で頑張ったんだ。
ピンポーン♪
インターホンの音にドキっとした。
だって誰がインターホンを押したか分かってるから。
「お母さんが来たんだ!」と僕はドタドタと足を鳴らしながら玄関に向かい、ドアを勢い良く開けた。
そこには紛れもなくお母さんが立っていた。
少し照れ臭そうに俯き加減のお母さんが立っていた。
なかなか家に入ろうとしないお母さんの手を取り、グイグイ引っ張って家の中に連れていった。
お父さんはお母さんの顔を見ると少し笑った。
お母さんも少し笑った。
「お帰りなさい」と僕も笑いながら言った。
「ただいま」とお母さんも笑いながら言った。
「あのさ…」
お父さんが二・三歩お母さんに近付いた。
「ごめんな」とお父さんはお母さんに言った。
あの時にしなかった“ごめんなさい”をしたんだ。
「ごめんなさいしたから仲直りだね」と僕はお父さんとお母さんの手を握った。
母の日は僕の日だった。
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