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少年は足を怪我して動けなくなった仔狐を手当てし,家まで送っていった。
「わたしが泣いてしまったら,その人は頭を撫でてくれて,大丈夫だよって云ってくれたの……。すぐにお母さんに逢えるよ,って」
『だから泣かないの。最後までおれが面倒みるから』
無事足も治り動けるようになった仔狐は,自分を手当てしてくれた心優しい少年を必死に探した。
けれど少年は見つからなかった。
彼の住みかだと云う古ぼけた家にも訪ねてみたが,既にそこは廃墟と化していた。
「だけどわたし,どうしてもあの人に逢いたくて……それで一生懸命探してたら……」
「俺のことを聞いたって訳か」
「……うん…」
藤は内心舌打ちした。
落とし物だとか迷子だとか,そんな下らない話だったら鼻で笑って,それで仕舞いだったのに。
やっぱり聞くんじゃなかった。
「特徴とか,ないの?」
「えーとね…確か茶色の髪をしててね,右手に傷痕があったと思う……」
…見つけるのは難しそうだ。
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