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「……」
この仔狐は本気だ。
真剣に少年について悩み,考え,行動している。眩しいと,そう感じるほど想いは真っ直ぐだ。
一度聞いてしまったからには何としてもやり遂げさせたい。
………………………………………………………………でも。
「よりにもよって葵さんかよ…」
嫌だな。
正直あの人は苦手で,なるべく避けたい相手。
それでも――。
「そんなに,逢いたいか? もしその人が君の知ってる優しい面影すらなくても……」
「うん」
「じゃあ――逢わせてやる」
「ほんとっ?」
「ああ。明日の夕方頃にもう一度,ここに来て。つれてくるから」
「ありがとう藤!」
仔狐は藤に飛びついた。長年想い続けてきた人と,ようやく明日逢える,それだけで頭がいっぱいになって胸がどきどきする。
「憶えてくれてるかな,わたしのこと」
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