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兄様と一緒じゃない。珍しい。というぼんやりと偏見に染まった感想はグレープソーダと一緒に飲み込んで。
「予定より早く終わったの。そのまま帰るのも面白くないからね」
「それでちょっかいをかけに来たと」
「そんな感じ」
まあ、邪魔をしに来ただけじゃないよ。
そう言って差し出された薄紫色のノートを開けば、そこには見易いように色分けの成されたテスト範囲の解説が並んでいた。
理解の出来ない数式に唸ることすら放棄していた六丞が央千代の後ろから覗き込み、邪魔だと追い返される。
「それ荊くん仕様だから、皆に使えるかは知らないけどね。只の邪魔になるのは僕としても気にくわないし、使えるなら使ってよ。
…まあ、央千代くんにはあまり必要なさそうだけど。今日はお兄さんは?」
「ご友人と図書館に行くそうなので、少々遅くなると」
「そう、後で迎えに行ってあげなよ」
「何を当たり前のことを。言われなくとも行きます(キリッ」
「キミ、兄様絡むと本当に面白いね」
右の人へ右の人へと回されていくノートは野放しに。
向かい側の綺麗に纏まったノートをちらりと一瞥し、くすくすと笑う紫妃はまた勝手に荊のポテトを摘まむ。
「先輩はテスト勉強しないの?」
「うん、教材も最低限しか持って来てないから。なあに紀依くん、どこか分からない?」
「あっ、えーと…じゃあこれ!」
「んー…これはね、ここを…」
「紫妃にょん、オレもオレも! 理科と数学と、あとねー」
「そんなにしっかりイヤだよ。良いゼミでもお探し」
「先輩、先輩、ノート借りていー?」
「はいはいご自由に、燵篭くん」
玉砕してテーブルへ懐く六丞を尻目に、他のメンバーはわいわいとアドバイスをし合い、ノートを寄せる。
「ねえ姫、ちょっと聞きたいんだけど…」
「うん、どこ?」
「紫妃にょん差別だーッ!」
中学二年生+α。
ひとり増えてまた賑やかになった勉強会は、捗っているのかいないのか、学生贔屓な店員と客に見守られながら和やかに進んでいった。
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