学期末は戦争です。

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  時刻は七時。ちょっと過ぎ。 賑やかな勉強会は一先ず解散となり、自宅へ図書館へとそれぞれの目的地へ向かうメンバーは店の前でバラバラとなった。 今は方向の似ている六丞、荊、紫妃が並んで歩いている。 「あ、紫妃にょんの鞄カワイーね」 「これ?」 鞄に付いているアクセサリーにキラキラと目を輝かす六丞に、紫妃は僅かに首を傾げた。 細身のウォレットチェーンに、シュシュ、リボン、フリフリの服を着たうさぎのマスコットが付いた鞄。普通ではつまらないと飾った結果のデコレーションである。 「なになに、何処で買ったの?」 「そんなに気に入ったならあげるよ」 「えっ」 「んあ?」 「あ、いや…」 どこか慌てたように声を上げた荊に六丞が首を傾げれば、その視線はサッと気まずそうに地面に落ちた。 その間にも紫妃はうさぎを除いた全ての飾りを鞄から取り外し、返事を待つ前にそれらを六丞の手に握らせる。 「はい」 「やったラッキー! あんがとー!」 遠慮というものを知らない六丞は、嬉々としてそれを自分の鞄へと仕舞い込んだ。 それから、ひとつだけ鞄に残り揺れているうさぎにまた首を傾げる。その視線に気付いた紫妃はくすりと小さく笑った。 「ああ…これはダメ。唯一無二の物だから」 「ふーん? あっ、オレあっちだわ」 人通りの交差点に辿り着き、三人の足が止まる。 「荊ちーん、明日はハートのヘアゴム持ってきたげるかんねー!」 「毎日のように人の髪で遊ぶなよっ!」 「あはははっ! そんじゃバイにゃーん!」 楽しそうに荊をからかい、信号が青から赤へと変わりかけている横断歩道を六丞は賑やかに駆けていった。  
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