2/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
  今日の分の仕事を終わらせ、固まっていた背中を伸ばす。バキバキと背骨が鳴いた。 「あ゛ー…」 「なんかそれ親父臭い」 「まじでか」 親父臭いとはいただけない。 自分の仕草に苦く笑い、ぐぐっと反らせていた背を元に戻す。 「まじで。はい兄貴」 「おー、サンキュ」 仕上がった書類の代わりに手渡された缶のココア。 まだ温かいソレのタブを起こし、ひとくち啜りながら纏めていた髪を解いた。 ふと視界の端に映り込んだ外を見れば、空は灰色。雨粒が休み無く窓を叩いている。 「…あれ、雨降ってんのか」 アヤの言葉に顔を上げた木蓮は書類を纏める手を休め、窓を見てから「ああ、うん」と頷いた。 それからまた書類を確認し、一枚ずつファイルに入れていく。 「さっき降り始めたみたいだね。兄貴、傘ある?」 「天気予報じゃ晴れだったよなァ…。アヤは置き傘あるけど、お前は?」 「うん、あたしも置き傘あるから大丈夫」 どうやら妹と相合い傘をする必要はなさそうだ。 木蓮が既にぎゅうぎゅう詰めの棚に新しいファイルを押し込み、ガラス張りの戸に簡易的な鍵を掛けている。 この棚もそろそろ容量オーバーだな。新調…考えてみるか。 机に散らばる文房具を纏めてペン立てに差し、カタリという小さな音をたてて自分の指定席を立ち上がる。 時計を見れば、もう下校時刻のギリギリだ。 「そんじゃ帰んぞー」 「あ、待って!」 左手に鞄。右手にココアの缶を持って生徒会室を出る。 ぱたぱたと小走りに後ろを着いてきた木蓮が照明を落とし、明かりの消えた室内をさっと見回して…異常無し。今日の仕事終了。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!