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今日の分の仕事を終わらせ、固まっていた背中を伸ばす。バキバキと背骨が鳴いた。
「あ゛ー…」
「なんかそれ親父臭い」
「まじでか」
親父臭いとはいただけない。
自分の仕草に苦く笑い、ぐぐっと反らせていた背を元に戻す。
「まじで。はい兄貴」
「おー、サンキュ」
仕上がった書類の代わりに手渡された缶のココア。
まだ温かいソレのタブを起こし、ひとくち啜りながら纏めていた髪を解いた。
ふと視界の端に映り込んだ外を見れば、空は灰色。雨粒が休み無く窓を叩いている。
「…あれ、雨降ってんのか」
アヤの言葉に顔を上げた木蓮は書類を纏める手を休め、窓を見てから「ああ、うん」と頷いた。
それからまた書類を確認し、一枚ずつファイルに入れていく。
「さっき降り始めたみたいだね。兄貴、傘ある?」
「天気予報じゃ晴れだったよなァ…。アヤは置き傘あるけど、お前は?」
「うん、あたしも置き傘あるから大丈夫」
どうやら妹と相合い傘をする必要はなさそうだ。
木蓮が既にぎゅうぎゅう詰めの棚に新しいファイルを押し込み、ガラス張りの戸に簡易的な鍵を掛けている。
この棚もそろそろ容量オーバーだな。新調…考えてみるか。
机に散らばる文房具を纏めてペン立てに差し、カタリという小さな音をたてて自分の指定席を立ち上がる。
時計を見れば、もう下校時刻のギリギリだ。
「そんじゃ帰んぞー」
「あ、待って!」
左手に鞄。右手にココアの缶を持って生徒会室を出る。
ぱたぱたと小走りに後ろを着いてきた木蓮が照明を落とし、明かりの消えた室内をさっと見回して…異常無し。今日の仕事終了。
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