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外はどうやら本降りなようで、窓からは猛ダッシュで駆け抜けていく生徒の姿が見えた。どうやら傘を持っていなかったようだ。
申し訳程度に鞄で雨避けを作っているが、この雨では一分ともたずにずぶ濡れだろう。
…そういえば。
「アイツ、傘…」
「ん?」
「いや…」
脳裏をよぎる彼は、傘を持たずに校門を潜っていたはずだ。おそらく折り畳み傘も無いだろう。
そわそわと落ち着きの失せた心中を察されてしまったのか、耳に木蓮の溜め息を捉えた。
「…行ってくれば? 先帰ってるから」
「あ? もう外暗くなってきてるし危ねェだろ」
「そんなか弱く見える?」
「見える」
「シスコン」
きっとそこらへんの同性よりは強いのだろうが、妹というのはやはり心配なものだ。それが小柄であるならば尚更。
なので断じてシスコンではない。
そうこうしているうちに、目の前にはまだ数名の生徒が溜まっている下駄箱。
背後からはもう一度、今度は盛大な溜め息が聞こえた。
「じゃあもう誰か捕まえて帰るから。大丈夫だから!」
「そう…か? んんー……、そんじゃ悪ィ。行くわ」
「もうさっさと行けっ!」
しっしっと追い払われるようにしながら、少々乱雑に靴を履き替え、足早に下駄箱を離れる。
それから通り様に自分の置き傘をさらい、恨めしそうに空を見詰める生徒たちの間を通り抜けて灰色の雨の中へと突撃していった。
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