学期末は戦争です。

2/5
前へ
/12ページ
次へ
  「な゛あああああ゛ッ!!!」 「うわ、うるさっ!」 放り投げられた六丞のシャーペンが荊の頭上を飛んで、カシャンと床へ落ちた。 世の学生が天敵に向けて備える季節。 それは鞍馬学園も例外ではなく、中等部二年生は来るべき学期末テストという強敵を迎え撃つべく、ファーストフード店で勉強会を実施していた。 ガチャガチャとボックス席のテーブルを寄せてノートを広げる学生たちを、そういう季節になったのかと食事中の客も懐かしく見守っている。 「数学とか意味わっかんねーもんマジで! ナニコレ! もう何か召喚できんじゃねーの!」 「あははっ! 召喚できたら面白いよなー」 「数学の授業賑やかになるねー!」 「いやいや絶対出るって! なんかこう、ドラゴン? みたいな? そんなやつ!」 燵篭と紀依の笑い声に身を乗り出し、熱弁。 そんな六丞の頭を薄紫色のノートがぴしゃりと叩いた。 「あいたっ!」 「そんな間違いだらけの数式で召喚できるのは補習くらいだよ、まったく」 叩かれた頭を擦る六丞がノートの持ち主を見れば、そこでは腕を組んだ紫妃が呆れたように溜め息をついていた。 それまで六丞の熱弁を苦笑いで聞いていた荊も、予定外である紫妃の登場にきょとんと視線を貼り付ける。 「姫! どうしたの?」 「どうしたもこうしたも、キミがここに居るって言ったんでしょ」 「確かに言ったけど…」 何を当たり前のこととばかりに首を傾げれば、紫妃は当然のように荊の左側へと腰を下ろす。 途中で拾った桃色のシャーペンは六丞の開けっ放しなペンケースに刺して。 「先輩、今日はバイトだったはずでは?」 今日はモデルのバイトが有るのだと荊から聞いていたようで、荊から勝手に飲み物を頂戴していた紫妃が視線を移せば、向かい側の央千代がちょんと小首を傾げている。 あまり興味のある話題ではなさそうだが、なんとなく、またはとりあえず口にしてみたいったところだろうか。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加