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「…こんな時間に…誰だろう…ちょっと待ってて?」
通話中の携帯を握ったままインターホンのモニターを覗き込む…
そこには、ジーンズのポケットに手を捩じ込み、丸めた背中を揺らし佇んでいる後ろ姿が映し出されている…
見間違えるはずのない…愛しい人の広い背中…
逸るキモチを抑えて扉を開く…
「どしたの…?
…ヒョン…ひとり…?」
「…あぁ…」
「…入る…?」
俯いていた顔をゆっくりと上げると少しだけ首を傾げるヒョン…
刹那気な瞳が俺を捕らえる…
「…んなワケないか…」
ヒョンに否定されるのが怖くて慌てて張った予防線…
だけど…ヒョンの唇は動かない…
だから…俺も動けなくなる…
微かに感じるヒョンの香り…
一瞬だって忘れたことなかった…
だけど…
「今更…何?」
そんな事これっぽっちも思ってなんかいないのに尖ってしまう言葉…
それでも、もし少しでも視線反らしたらヒョンが消えてしまいそうで…瞳に力を込める俺…もう、瞬きすることさえ惜しいくらい…
『逢いたかった!』
駆け寄って、飛びついて、抱きしめて…その香りをもっと近くに感じたい…
でも、できなくて…
ヒョンと俺…今、こんなに近いのに…こんなに遠い…
逢いたくて…逢えなくて…逢いたい気持ち溢れ過ぎて…もしも逢えたら磁石みたいに引き合ってくっついて離れない…きっとそう…
朝も昼も夜もいつだってそう想ってたのに…
時間ばかりが過ぎていく。
このままじゃイヤだ…
「…ヒョン…
何で…ここに…?」
「……………」
相変わらず動かないヒョンの唇…でも重ねられたままの瞳は真っ直ぐで揺るがない…
ここに来るの簡単じゃ無かったはず…
『それでも俺に逢いに来てくれたんでしょ?』
自惚れそうになる俺と
『自分のした事を思い出せ…』
否める俺…
。
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