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「今日は母の日だね。ところで、母親が子供に与える影響は多大なものだと思わないかい?」
「まあ、大抵は母親がガキの世話をするからな。必然的に一緒にいる時間も長くなるし」
「父親も必要とはいえ、お腹を痛めて子供を産むのは母親だからね。やはり、母親という存在は大きいのだろうね」
「そうだな。けどよ、身勝手な話だが、痛い思いをしてまでガキが欲しいのかと思うぜ。身勝手と言えば、親もな。ガキは親を選べない。生まれてきたくなくても選択権なんざない」
「おや、君は生まれてきたくなかったと?」
「ああ、こんな痛いだけの世界になんてな。親に不満を言うつもりはないが、どうせなら別のガキを産んでほしかったぜ」
「痛いだけの世界か……ずいぶん偏った見方だね。君が思うほど、この世界は酷くないと思うけれど」
「説教でも始める気か?言っとくが、オレは考えを改める気はないぜ」
「改めるだなんてとんでもない。人の考えは三者三様で十人十色、千差万別であるべきだよ。もっと聞かせてほしいな」
「ふん。獅子は我が子を崖から落とすって言うが、人間は地獄に堕とす。この世界は暗くて黒くて喰らうからな」
「喰らう?」
「人を、な」
「なるほど。分からなくもないかな。でも、生まれたからには楽しまないと損じゃあないかい?」
「何を楽しめってんだよ」
「楽しいことなんていくらでも見つかるよ。この世界を信じていればね。信じる者は救われると言うじゃないか」
「ハッ!足を掬われるの間違いだろ」
「君は本当に偏見の塊みたいな人だね」
「ほっとけ」
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