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「おや」
「げっ」
「久しぶりに会ったというのに『げっ』はないんじゃないかな。流石に傷ついたよ」
「はいはい、そーですか。じゃ、オレは忙しいんで」
「つれないなあ。少しくらい話に付き合ってくれてもいいじゃないか」
「お前の相手は疲れんだよ」
「まあまあ、そう言わずに。それにしても、君が夏祭りに参加しているなんて意外だったよ」
「ああ、手伝いに来てんだよ。無償奉仕ってやつ」
「ムショーホーシ?え、何それ美味しいの?」
「何で片言なんだよ!」
「いやあ、ごめんごめん。まさか君の口からそんな四字熟語が聞けるとは思わなかったからね。君にもボランティア精神というものがあったなんて驚きだよ」
「オレを何だと思ってやがる……」
「一応誉めてるんだよ」
「誉められてる気がしない」
「まあ、そんなことはどうでもいいんだけど」
「……いちいち癪に障る奴だな」
「それより、ボクを見て何か感じないかい?」
「……何かって?」
「ほら、ほら」
「はあ……『ほら』って言われても……」
「まったく、分かっていないなあ。浴衣だよ?浴衣。何か言うことがあるでしょう」
「……暑そうだな。まだ日も沈んでねえっつーのに」
「……君は男として失格だね」
「オレは女だ!」
「ま、君に女心の機微が分かるとは思っていないけれどね」
「ガサツで悪かったな」
「あ、自覚はあるんだ」
「うるせー」
「君は浴衣着ないのかい?」
「オレのキャラを考えろよ」
「いやいや、ギャップ萌えってやつでウケると思うよ」
「お前はオレをからかいたいだけだろうが。第一、祭りに参加しに来た訳じゃねえんだからいいんだよ」
「君だって黙っていて動かなければ美人なのに」
「オレのアイデンテ……アイデンティティーを全否定か!?」
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