始まり

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階段を降りると たちまちいい香りがしてくる。 その匂いと共に トントントントンと規則正しい 包丁の音が聞こえてくる。 階段から左に曲がり 少し長めの廊下をあるいてゆっくりとリビングに入る。 「あら、ゆい。おはよう」 モコモコした熊さんのエプロンを着けた母が 私に背を向けた状態で言う。 『おはよう。ところでなんで私だってわかったの?』 「いやぁねぇ。あなたの母親よ?リビングから毎日あなたの足音を聞いてるんだものわからないはずないでしょ?」 「確かになぁ。ゆいの足音はのそのそとぞぉさんが歩くようにゆっくりだもんな。」 お兄ちゃんがパンを口いっぱいに含み片手に牛乳を持ちながら言う。 「あらぁ。かずやだっていつもバタバタってにぎやかな足音じゃない。」 母が笑顔を向けながら言う。
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