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―――ヒュッ、と草原に風がなびく。
周りを山々と小さな湖、そして周りの山々に引けをとらない大きな城に囲まれたその草原に彼、瀬川悠(せがわゆう)は立っていた。
呆然としている、とも
言い換えてもいい。
一口かじったメロンパンを左手に
「……メロンパンって、メロンの味しないよな」
そんな突拍子な事を呟いた。
彼が天然なのか、
彼が冷静を保っているかのように見せて、実は内心身体中から変な汗が出そうなのか、突如として風景が変わったことにより、彼の脳が壊れたのかは
分からないが、彼は今もメロンの味がしない
メロンパンを黙々と食べている。
髪は手入れをしていないのか、雑に伸びていて、ブレザーに学校指定の鞄というどこにでもいそうな普通の学生姿である。
そんな彼が何故、日本
ではまず見ないような この地にいるのか?
それは―――
「やっぱさ、パン類じゃ一番焼きそばパンだよな」
……彼は、もしや昨今のストレス社会で心が折れたのではないか、その様な心配までしてしまう。 そんな彼が再びメロンパンに口を近づけた時、
後方からは馬が草原を駈ける音が、ただひとつ騒がしく瀬川の耳に入る。
「あ、いました」
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