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毛並みの良い馬にまたがっているのは、奇抜な格好をしている少女だった。
少女が瀬川をまじまじと、品定めしるように見る。
「……ふむ。外見的特徴も一致、と」
少女は、慣れた手つきで馬から降りると、方膝を尽き、頭を下げた。
「……はい?」
「失礼ですが、お名前を聞かせて頂きたいのですが」
瀬川の困惑は、少女の奇行をからして当然だろう。
……彼もまた、そんな状況で未だにメロンパンを食べているという奇行ぶりではあるが。
「……瀬川悠、ですけど」
メロンパンを飲み込み、瀬川は名乗った。
少女は僅かに頷くと、静かに瀬川の顔を見上げた。
黒い瞳に、黒く短い髪。
日本人学生の、至って標準的な瀬川。対して、顔をあげた少女の瞳は翡翠を思わせるような澄んだ緑で、少女の金色の髪は、そこはかとなく西洋出身だと連想させる。
「私は、宮廷魔術師兼侍女の、ナーシャ・ユリオンと申します」
ナーシャと名乗った少女は立ち上がると、長い金髪をなびかせ、その翡翠の瞳で瀬川を見据えた。
「突然で申し訳ありませんが、私と一緒に来ていただきます」
瀬川は、半分程食べ終えたメロンパンを片手に、
「……はぁ」
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