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などと呑気な返事を返す。危機感が欠落しているにも程があるが、それこそが、瀬川悠が瀬川悠たる由縁である。
が、瀬川が了承したのを合図にしたかのように、ナーシャの馬が倒れた。
「……少し、遅れてしまったようですね」
ナーシャは横目でつい先程まで自分がまたがっていた馬を見る。
「(……ふむ。外傷はありませんね。ギリギリですが、息もあります。ならば……)」
「……なんか馬、倒れてるんですけど」
「問題はありません。
単なる麻痺です。しばらくしたら回復します。それより悠様、しばらくの間、この場を動かない様お願い致します」
「……え?」
ナーシャはガーターベルトから小さな銀製の棒を一つ抜くと、奇妙な言葉を口走った。
「……静寂の女神、月雫の煌めきを片手に風の子を愛せ……聖星法典第一条
『虚構の自由』」
ナーシャが銀製の棒を瀬川に向けると、瀬川の足元に幾何学的な模様が浮かび上がる。
「この陣の中に入れば、貴方に対する攻撃は心配無用です。
……すぐに終わらせますので、少々お待ちください。」
ナーシャは静かに微笑むと……
飛翔した。
残された瀬川は、青々と輝く陣の中で唯一人
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