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ちょっぴり苦笑しつつ、午後の処方箋の事務作業を終えるべくポンポンとリズミカルに判子を押していく。日付と名前を書き入れて、所定の項目を目で追う。
職場の人は全員が女性で、みんな自分より年上だ。
智美は経営者ながら同時にかわいい妹分のような存在らしく、こと恋愛ごとに関していつもうまく話題にされてしまっている。
「見つかるといいんですけどね……。どこかに渋くて良い人、いないかな」
「そういえば渋い人が好みだったっけ?じゃあ森下くんは無理だよねぇ。渋いって言うより断然かわいいタイプだもんねぇ!」
あっはっはっは、とその場にいた4人くらいで笑いの渦が巻き起こってしまった。
どうやら自分のいないところを見計らって森下さんは職場の女性陣全員に対して集団相談会を開催したらしい。
相手の職場で恋愛相談?
渋くて仕事のできる男なら絶対しない。非常識にもほどがある。恋愛対象以前に社会人としてかなりのマイナスポイントだ。
理想と現実のギャップに智美は処方箋の陰でこっそりため息をついた。
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