神宵

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  街角にある人、車、空、建物、全てが飛んで去って行く。 そもそも「彼」に、そんなものを見ている余裕などありはしない。 「ちっ、また遅刻かよ!」 そう言って全力疾駆する彼は、左足を軸にブレーキをかけ、曲がり角を煙を立てながらカットしていく。  実は普段の彼なら、あまりに遅刻そのものを気にすることはないのだが、残念ながら今日のはじめの授業だけは「単位」がかかっていた。 変に「全ての単位をきちんと取る」事だけは気を付けていた事もあり、この時ばかりは彼も結構一生懸命だった。 「昨日、魔方陣特集ばかり買ってしまったのが痛かったな!」 そうぼやきながら、更に速度をあげるが… キーンコーン… 学校の古くさいチャイムの音が聞こえた。 「…」 途端に一気に減速をかけると、「ふぅ…」とため息ひとつ。 「まあ頑張ったよ、俺」 そう言って、さも無興味の目で学校を見つめる。 「珈琲飲んでから行こう」 そう独り言をこぼして、ターンすると喫茶店に入っていった。
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