ごとり

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ごとり

     昔々、ある所に小さな村が有りました。  村の外れには沼があり、その沼を囲む様に鬱蒼とした森が広がっていました。  ある日の事、村に移り住んでいた七朗と言う若い男が、森へ行ったきり夜が明けても帰って来ませんでした。  次の日、七朗を心配した、恋仲の五(いつ)と言う娘が森へ捜しに行ったのですが、お五も帰っては来ませんでした。  村では、二人で駆け落ちして村を出て行ったのだろうと言って、二人を捜しには行こうとしませんでした。  ですが、お五を女手一つで育てた母親は、駆け落ちしたと言われても、お五はそんな娘では無いと、納得できません。  なにより、七朗が森へ行った前日、お五を七朗の嫁にとの話が決まり、二人共大層喜んでいたからです。
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