ごとり

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   女は初(はつ)と言い、ガタガタと震え出した三太(さんた)の女房でした。  臆病な三太と違い、お初は村で評判の肝っ玉の座った女です。  そしてお初は、あたしが捜して来てやるよ、と言いました。  お初は明るい内にと、赤ん坊を背負ったままで早速森へ向かいました。  森の中は昼でも夜の様に暗く、沼も鈍よりと濁り底が見えません。  さすがに不気味に思いながらも、背中で泣く赤ん坊をあやしながら、沼にそって森の中へと進んで行きました。  木の間や、沼の淵に目を懲らしながら歩いて行き、森の半分まで来た所で、ガサガサっと音を立てて頭上の枝が揺れました。
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