22人が本棚に入れています
本棚に追加
コンコン
『……瑞樹? ごはん、いる?』
瑞樹の部屋のドアがノックされ、母の声が聞こえた。
「……いい」
『そう……』
しばらく静寂となり、瑞樹は、母が下に降りたのだろうと思っていた。
だが、そうではなかった。
『……瑞樹。最近、ちょっと帰り、遅いわよね? 何かあったの?』
「……ううん、別に」
『……お母さんたち、嫌い?』
「……」
瑞樹にとって、母は、そういうわけではない。
何より自分を大切にしてくれるから。
しかし瑞樹は、母の質問に答える気は無かった。
『……ごめんね』
母はそう言い残し、今度は去っていったようだ。
足音が、着実に遠くなっていく。
「……ぼくなんて、生まれてこなければ良かった」
瑞樹はそう呟くと、また、瞳を涙で包み始めた。
.
最初のコメントを投稿しよう!