孤独と孤独

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「ぐすっ……う、うぅっ……!」 少年は、泣いていた。 藍の空に包まれ、閑散とした小さな公園に、ただひたすらに聞こえ続ける泣き声。 誰も通らないため、ここだけまるで別世界のようだ。 「ぼく……どうしていつも……っ」 尾野 瑞樹(オノ ミズキ)、中学二年生。 おとなしく、引っ込み思案で、臆病な性格が災いして、彼はクラスで浮いた存在。 そのためイジメの的になってしまい、そのツラさに耐えきれない彼は、毎日といって良いほどの回数、瞳から涙を流している。 それを助けるものは……誰もいない。 「ひっく……うぅっ……」 自身でも情けないと思ってはいるのだが、涙を抑えることができない。 そんな自分を恨み、責め続けている。 そんなの、何のためにもならないことをわかっていても。 「……なぜ、泣いているの?」 「……えっ……?」 その時、美しいクリアな声が、彼の前方から響いた。 瑞樹は、うつむいていた顔をスッと上げた。 「あなた……泣いてる。……どうして?」 そこには、怪訝な表情をした、明らかに現実離れをした少女が立っていた。 恐ろしいほどにほっそりとして、華奢な身体。 短く揃えられた、銀の髪。 薄い紫の瞳には、心無しか輝きが窺えない。 そして何より……。 彼女の背中には、傷だらけで、なおかつ一部が抉(エグ)られた白い翼が、“生えて”いた。 .
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