孤独と孤独

5/16
前へ
/73ページ
次へ
「で……でも、て、天使って……み、見えるものなの……?」 「……天使は、字の通り、天からの遣い。……地上で生涯を終えた魂を、天へと送り届ける存在。……だから、見えるのは、死に逝く魂のみ」 ティアのその言葉に、瑞樹は戸惑いを隠せなかった。 「ま、待って。じ、じゃあぼく……し、死ぬの?」 「……いえ。あなたは、まだ生きている」 「な、なら、何で君が見えるの?」 「……わたしが、天使としての力を、失っているから」 「えっ……?」 瑞樹は、混乱していた。 なぜ彼女は、自らを天使と言ったのに、その力が無いと言ったのか? 「……天使は、翼によって、地上との隔離を図っている。……でもわたしは、その翼を持っていかれ、…………堕とされた」 真実を知った瑞樹は、言葉が出なかった。 「……だからわたしは、天使であって天使で無い」 自身で、自分の存在を否定したティア。 彼女と自分が、どこか似ている。 もしかしたら……と一瞬思った瑞樹だが、すぐにその考えを捨てた。 彼女は人間じゃないからと、理由をつけて。 「……羽、治るといいね」 「……いずれは治る。……でも、それはまだ先の話」 彼女はいったい、いつから地にいるのか。 気にはなったが、瑞樹は、詮索はしないことにした。 「……行くの?」 瑞樹が立ち上がると、ティアは表情ひとつも変えず、淡々と訊いてきた。 「……うん」 瑞樹は、それに小さくうなずくと、ゆっくりと歩き出し、公園を後にした。 .
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加