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沈黙の時間が、ただひたすらに続いた。
お互いの吐息の音、日が沈み、煌々と輝きを放つ街灯と、それに群がる虫の羽音。
それ以外、何も聞こえないこの公園。
少しして一瞬、誰もいないような錯覚を覚える瑞樹。
彼がふと顔を上げると、瑞樹の周りに、彼女の姿は無かった。
「……帰ったのかな」
と言っても、彼女の帰る場所はどこなのか、まるで見当がつかない。
堕とされた天使は、この地上で、どのように生きていくのだろうか。
「……なんで、あんなに訊いてくるんだろう」
昨日もそうだった。
彼女は、何でも訊いてくる。
どれだけ瑞樹が、関係無い、気にするなと言っても、けっしてめげず、改めて訊く。
それも、表情ひとつ変えずに。
「……」
瑞樹は、考えても仕方無いと、立ち上がり歩き出した。
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