序章

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― ― ― 三方を海に、一方を長大な山脈に区切られた東の大国の名を『琉(リュウ)』という。 琉国は、かつて十三の部族が覇権を狙う戦乱の絶えない国であったが。 千年程前に台頭した琉氏によって各部族を併合、及び掃討し大国統一を迎えた。 これより琉氏を王に頂き、初代皇帝琉水晶(リュウ スイショウ)の下、琉国は隆盛の道を歩むことになる。 時は流れ、琉国二十九代皇帝琉古琅(リュウ コロウ)の御世。 琉国皇帝の居城、泰白宮(タイハクキュウ)は後宮にて変事が起こった。 琉琥珀(リュウ コハク)皇太子暗殺である。 賊はその場で斬り棄てられ、皇太子は無事に保護されたが。 当代一の美姫と謳われ皇太子の実母である南后(ナンゴウ)紅胡蝶(コウ コチョウ)がその短い生涯に幕を閉じた。 南后の逝去に伴い、再び白紙に戻された皇后の座を巡って北后(ホクゴウ)、西后(サイゴウ)、東后(トウゴウ)の正妃達の覇権争いが後宮と前宮の垣根を超えて激化する最中。 第二十九代皇帝琉古琅が急逝したのである。 この時、琥珀皇太子は未だ齢八つの幼児であり、南后の死から立ち直る時間も与えられぬまま玉座に就いた。 幼帝を擁立したのは東后昌赤雪(ショウ セキセツ)。 南后紅家の政敵、昌家の姫である。
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