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自分から言い出した癖に。そう思いつつも、俺はそれを胸の奥へ乱暴に押しやった。
「荷物も持たない点は、不審でならなかった。そして今、所持品はこの紙一枚ときた。どう考えても普通じゃない」
「まあ、常人の感性からしたら有り得ないですね」
「そして君の言っていた、彼女の異常行動。以上の点だけでも、明らかに彼女は怪しい」
二人で謎めいた草野の話をしていると、突然草野が立ち上がった。
さすがの篠原も驚いたらしく、俺を盾に後ろに下がる。
「うう……花崎さんに篠原さん。本日はお勤めごくろーさまでした。私、帰らせていたらきます」
軽くしゃっくりをしながら、草野はふらつく足で帰宅への道を辿っていく。
「好機だ」
「何がです?」
「彼女の秘密を暴けるかもしれん。追うぞ!」
「篠原さん、俺の背後にいる時点で、格好付かないですよ」
「くくっ、いいんだよ。普段からして格好良いのだから」
そう言って篠原は意気揚々と草野の後を追う。
今のが冗談なのか、それとも本気だったのか分からなかったが、とりあえず俺も草野を尾行することにした。
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