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時間がゆっくりとだが、確実に過ぎていく。篠原が去ってから二時間が経過した。
「もう九時か」
もう来ないんじゃないか?
欠伸をしながら、ベッドに寝転がる。緊張など大分薄れ、俺は比較的リラックスしていた。
だがテレビドラマが始まり、テレビに魅入っていた時だ。物音が聞こえた。
初めは気のせいかと思ったが、徐々に近付くその音がはっきりと足音だと気付いた時、血の気が引いた。
こちらに近付いている。間違いない。
動揺が心臓に伝わって、落ち着きを無くそうと鼓動が速まる。
足音が止まる。それは明らかに俺の部屋の前だった。
だが、そこから音沙汰が無くなる。
体が熱くなり、汗が顔から脇から流れ出てきた。
何分間かが経ったであろう、時計の針が動く音が聞こえた。
誰がいる? 空耳だったのか?
静かにベッドから降りた。動いたのが分かったのかチャイムが鳴り、俺は身を固める。
また静寂が戻った処で、ドアに忍び足で向かうとまたチャイムが鳴った。
体が反応するのを最小限に抑えて、覗き穴を見る。
だが、何も見えなかった。
……なんで、何も見えない? 黒一色だ。
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