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あれは何だ。重量があるようだし、多分俺を始末するための鈍器だろう。
俺の人生はここで終わるのか?
草野が俺の目の前に立った。逃げ場のない、神の慈悲がない状況が生まれる。
「お、俺をどうする気だ。お前らの仲間にはならないぞ!?」
草野は感情の篭らない目で、俺を凝視する。そして目を見開くと、袋を持つ手を動かした。
「うわあああ!?」
殺されてたまるか。こんな所で死にたくない!
草野を押そうと手を突き出すが、逆に腕を掴まれ壁に押し付けられた。抵抗する俺に対し、草野の顔が俺の顔の間近に迫る。
「何を慌てているのですか」
「は、離せ! お前の目的は分かってるんだぞ!」
「……それなら話が早いですね」
草野が微笑みを浮かべ、手に持つ袋を俺の右側頭部に付けた。
ひんやりとした何か硬いものが当たる。鉄か何かかと思ったが、耳に水が揺れるような音が届き、俺は思わず眉を寄せる。
「み、水……?」
「飲みましょう。朝まで徹底的に」
「は?」
草野が袋から取り出したものは、冷えた缶。金色の文字で、ビールと書いてあった。
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