12266人が本棚に入れています
本棚に追加
各々飲み始める。草野は無表情で飲み続け、あっという間に頬が紅潮した。
酒に弱いな。また暴走しなければ良いんだが。
「花崎さんは、篠原さんと仲が良いですよね」
「ああ、まあ仕事仲間が彼しかいなくなってしまったから、必然的に話すようになりまして」
「私とも仲良くしてください」
「え、ええ。もちろん」
愛想笑いを浮かべ落ち着いているように見せつつ、俺の心が怯えていることに変わりなかった。
草野は何がしたいんだ。予想出来ないし、今この時さえどうすれば良いのか分からないぞ。
突然何をされるか分からない。それが怖くて仕方がなかった。
「そ、そうだ。篠原さんも呼びませんか? 三人で飲んだ方が楽しいですよ」
「……いえ、私は花崎さんと飲みたいのです」
酒の入った女には、魔性の魅力が宿るらしい。潤んだ目に見つめられ、俺は頷いてしまった。
念を推しておけばよかったものを、自分から救世主を自然に呼べる好機を捨ててしまうとは、不覚だ。
ビールを飲みはするが、全く酔わないのは緊張しているせいだろう。反対に草野はぐいぐいと飲んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!