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その日の勤務が終わる。やれやれ、意外と立ち疲れるもんだな。
奥から樋口さんがやってきた。手には封筒を五枚持っている。
「ご苦労さん。今日の分だ」
名倉から順に渡され、遂に俺にも手渡される。中を確かめると、福沢諭吉の絵が付いた札が、十枚入っているのが確認出来た。
たまらねぇなこれは!
ロッカールームに戻ると、やはり浮かれるバイト仲間達。
「マジヤバい! マジで十万じゃん。やべえ超テンション上がる!」
「ここにいる全員分で五十万よ? なんか信じられないわ!」
皆川がそう言うと、猪上が十万円を取り出しそれで皆川を叩いた。
「おらっ!」
「きゃっ! 何するのよ」
「十万で叩いたんだよ。リアルだって分かったでしょ?」
少し考えて、皆川は嬉しそうに笑う。
「そうね。感じちゃったわ! 今ならマゾヒストになれそうよ」
二人の馬鹿笑いの近くで、さすがの篠原もにやけていた。ま、嬉しくない奴なんていないだろうしな。
俺も浮かれた気分だったが、一人ベンチに腰掛ける、名倉さんだけが暗い顔をしていた。
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